足部の痛み。必死に練習を行った際の悲劇
バドミントン部 高校3年生 男
身長約178㎝ 体重60㎏
やせ型
競技レベル (県大会のシード権を持つ選手)
主訴 右足部の痛み
3/5 ♯1 2/28日の練習から右足背部に痛みを覚え、3/5からは足を床につけることも痛くて、つきたくないほどになる。
圧痛点はリスフラン関節及び第4中足骨に認められ、
軸圧・牽引痛があり、指を動かす伸筋腱もはっきりしない腫れが認められた。
リスフラン関節の捻挫及び中足骨の疲労骨折も考えられたため、病院にてXPの精査を勧めた。
当日の処置は①アイシング&マイクロカレント通電②下肢筋緊張を取るように手技療法③疼痛緩和のための鍼通電療法を行った。
3/6 ♯2 病院へは行かずに翌日も練習後に来院。
症状は目立った変化なし。
3/17 ♯3 当院へ来院。痛みがあってもラストシーズンの為、折れるまで休みは認めないという監督の意向で練習を強行。
症状はかわらず、痛む部位は以下の通り。
負担の強い合宿前に精査を行って欲しく当初はスポーツ整形外科もあり飛び込み受診可の医療法人松田会 松田病院を紹介する。
施術は①マイクロカレント通電②手技療法③鍼通電療法
3/18 ♯4 施術は①マイクロカレント②筋緊張緩和の手技療法③東洋医学の観点から見た患部以外での骨に関するツボへの施灸を行う。
保護者と一緒に来院されたので、再度松田病院もしくは町中にあり通いやすい国家公務員共済組合連合会 公済病院での精査を勧める。
公済病院は医療機関からの紹介状による完全予約制になっており、希望する場合は直接受診でなく医療機関からの予約を取る必要があるので
かかりつけ医に相談をしてみるように伝えた。家が太白区なので泉区の松田病院までは継続して通えないとなる。
保護者がとりあえず近くの病院へ連れていき、要精密検査となればまた相談するという事になる。
3/19 悔いなく最後の大会を迎えてほしい想いがあり、春休み中のこの時期に一度精査を行わせたく、
本人も通いやすく足部に明るい先生のいる病院で検査をするために、以前別の患者様でお世話になった
国家公務員共済組合連合会 東北公済病院へ当院から問い合わせを行った結果、
当院からでも紹介手続きを行うことが出来るということで、紹介状を発行する運びとなる。
スポーツに明るい先生にお願いしたい旨を伝える。
岸本光司先生(足部専門・ベガルタチームドクター)が担当することになり、
火曜及び第2第4金曜日担当ということで、一番近い24日(火)を患者様に確認の連絡を入れた後に予約を入れる。
しかし、学校が終業式で休ませられないと学校サイドから通達を受け、31日(火)に変更。
♯5 同日練習後に来院。症状は少し腫れが引き疼痛もプレー中は忘れられるくらいに改善。
痛みはあるが練習は出来るので病院へ行くのもためらう程になった。しかし大会直前にリタイヤすることの無いように
病院を受診することになる。当日の施術はマイクロカレントをプローブにてかける。東洋医学的な観点から骨に関するツボへの鍼による施術。
3/31 27日~30日に校内の合宿が始まり気力で参加する。
国家公務員共済組合連合会 東北公済病院を受診。宮町スタッフ和田も診察に立ち合い。
担当医 岸本光司先生
XPにて診断を受ける。 傷病名 第4中足骨頸部疲労骨折。
同日、傷病の度合いを診るためにCTも撮影し結果もその日に聞く。
→通常は仮骨形成によって疲労骨折が判明するところだが、CTの結果、第4中足骨の小指側が半分ほど空洞になっており、紙一重でつながっている状況が判明。
頸部の為、ボルトを入れるにも単に打ち込むことが出来ないので、最悪の場合に関節面を傷つける形のオペになる※1ため、可能な限り保存療法での完治を目指す旨の説明を受ける。
出来れば骨シンチグラフィを行うとより鮮明に分かるところだが、公済病院には無いため、4/2にMRIの検査を行い、3日に状況の説明及び今後の治療計画を検討することになる。
4/3 検査結果を聞く&インソールの採寸の為東北公済病院を受診。和田立ち合い。
保護者と共に病状を聞いた結果、MRIの状況を確認すると本来炎症反応が映るべきところに映っておらず、治癒に向けた反応がみられないので、このまま経過を観て変化が無い場合には骨移植によるオペになると説明を受ける。
骨移植となった場合、他の骨から部分的に切り取り、患部へ移植することになる。そうなった場合は最も近い24日の選手権はおろか高校生活最後の高総体も出場できないまま引退となりうる。インソールの作成が17日に完了し、その時まで絶対安静とし再度XPを撮影し判断することになる。24日に高総体の予選を兼ねた選手権大会が開かれるが、監督は是が非でも出場させる意向である事を聞き、保護者や選手からはうまく病状を説明できないという事で、部活の監督へ患者さんの病態の現状を説明しに行った。
結果、無理をして総体への出場断念となるのを回避すべく選手権は棄権することとなる。
4/4 ♯6 東北公済病院の岸本先生から承諾を得て、当院で経過を観て検査を受けに行く形となり施術を行った。
マイクロカレント通電、手技療法による下肢の血流促進、鍼灸による体質的なアプローチ(骨に関するツボへの)4/5・4/6・4/12と同様の施術を行った。
4/17 東北公済病院にてインソールのチェック及び状況の確認。スタッフ和田立ち合い。
レントゲン撮影の結果、当初空洞化していた場所が石灰化してきており、このままいけばオペの必要なく、運動もインソールを装着して少しずつ可能の判断を受ける。
4/24 再度東北公済病院を受診。レントゲン撮影の結果ほぼ完璧にくっついたと言っていい状況まで回復。
図
4月24日にも総体前の予選大会があったが棄権し、総体のみに照準を絞って治療を行った。
欲を言えば、エントリーだけでもしておけばこの大会にも間に合った結果となったが、ダブルスの試合の場合ペアを組んだ選手に、間に合わなかった場合の影響を考え苦渋の選択で本戦一本とした。
病院での確定診断・及び手術検討からおおよそ3週間でほぼ完治となった。
一次は手術し選手生命を考えなければならない程の状況から回復し、高校生活最後の大会へ間に合わせ皆と涙を分かち合うことが出来た印象深い症例となった。
※1今回の怪我をした中足骨は骨の形状から頸部・骨幹部・基部に分けられる。
本来は下図の通り体部の骨折が多く、オペも行いやすいが、頸部の場合ビスを打ち込むにも関節面に近く選手生命を考えると非常に厄介な部位を怪我してしまった。
図1
中足骨の疲労骨折
・どのような疾患か?
ランナーや陸軍歩兵など繰り返される荷重負荷が足部にかかると発症し、本来最も頻度が高いのは第2中足骨である。ランニング時に最も大きな曲げ力と剪断力がかかるためである。
通常は骨幹部に発生するが、バレエダンサーなどは基部に発生することが多い。
・診断
受傷直後はレントゲン撮影でも正常像を示すが、受傷から2週間以上経過すると骨硬化像や骨膜反応がみられる。初期での判断は骨スキャンやMRI STIR等によって判断される。
・治療
通常は単下肢ギプス固定、単下肢装具固定などの保存療法により6~8週で骨癒合が得られる。
保存療法無効例や骨折部の転移が大きい例では手術を行う。
図1の通り。